乳腺外来診察室だより

【第11話】 いよいよデジタルマンモグラフィ検診車が走り始めます

 前話で、「50歳以上の女性全員が2年に1度マンモグラフィ併用検診を受診すれば、乳癌による死亡率を40%減らすことができ、50%の受診でがん対策基本計画(基本計画)の目標値である死亡率20%減少を達成できる。」ことをお話しいたしました。

それでは具体的に兵庫県ではどうでしょうか。

平成18年の統計では検診対象者が1,004,529人で、受診率は7.8%でした。これはおよそ31,000人(2年に1回の受診として1年間での受診者数)が検診を受けられたことになります。基本計画の目標を達成させるためにはあと3年以内に年間の受診者数をおよそ251,000人まで増やさなければなりません。

では西脇市ではどうでしょうか。乳癌検診対象者は9,587人で受診率は4.3%でした。これは統計をとっている県内40市町のうち下から4番目の低さです(ちなみに多可町は対象者3,720人で県内上位第2位の29%、丹波市は対象者9,136人で上位第3位25.1%でした)。この西脇市の受診率では、乳癌検診を受けることによって乳癌死亡率を1.72%しか改善できていない計算になります。また、乳癌検診受診率を50%まで上げるためには年間の受診者数を206人からおよそ2,400人まで(つまり10倍以上)増やさなければなりません。

そこで当院では少しでも乳癌検診受診者数増加に貢献できないかを検討して参りました。その結果の一つがマンモグラフィ検診車の導入です。検診車には認定放射線技師と医師が同乗し、市町村や企業を巡回する事を予定しております。これにより、なかなか病院までお越しになれない方や仕事が忙しくて時間があまりとれない方にもマンモグラフィ併用の乳癌検診を受診していただける機会を作る事ができるかと思います。

少しでも多くの方が乳癌を早期に発見され、克服することによって健康で幸せな生活を送られることを大山病院職員一同、心より願っております。

【第10話】 乳がん検診を受けましょう

 これまでに乳癌全般についていろいろとお話ししてきました。それでは乳癌から大切な命を守るためにはどのようにすれば良いのでしょうか。結論から申し上げますと経済的にも、時間的にも最も効率の良い方法は「マンモグラフィ併用検診を普及させる」ことです。

 平成19年4月1日にがん対策基本法が施行されました。そしてがん対策を推進するために平成19年から23年の5年間を対象としてがん対策基本計画(基本計画)が作成されました。目標値としてこの5年間にがんによる死亡者「年齢調整死亡率(75歳未満)」を20%減らすことが盛り込まれています。これを達成するためには、「進行・再発がんの医療の更なる充実が必要」と謳われています。確かに進行・再発がん治療の発展は必要です。しかし、5年間という限られた期間の中で急激に治療法が発展するのでしょうか(もう既に2年近くが過ぎています)。
 幸いにも乳癌は特に早期発見により治癒率向上が期待できる病気です。乳癌の約90%は乳管という乳汁が通る管を形成している細胞から発生します(図参照)。この管の中に留まっている癌(非浸潤性乳管癌)は通常しこりを作らないので、触診で見つけることはほぼ不可能です。多くはマンモグラフィで撮影できる微小石灰化を手がかりに発見することができます。この段階で乳がんを発見し手術で取り切れれば、理論的には遠隔転移をしません。実際には99%が完治します(10年生存率99%)。また、浸潤癌であっても2cm以下でリンパ節転移が無い段階で切除し、術後の予防的な治療を組み合わせることによって約90%の方が治ります。
 では、より多くの方が乳がん検診を受けて、早期に発見される方が増えればどうでしょうか。統計学的には「50歳以上の女性全員が2年に1度マンモグラフィ併用検診を受診すれば、乳癌による死亡率を40%減少させることができる。」と予測されています。つまり、乳癌治療が現状のままであっても、例えば50%の女性の方が検診を受ければ死亡率20%減少という基本計画の目標が達成されてしまいます。実際の基本計画でも5年以内に50%以上の受診を目標としています。もしこの目標が達成されれば1年間に5000人以上の方の命が助かります。
 まず、自分達でできることから始めてみませんか。町内、会社内あるいはお友達やご家族の中でも良いと思います。とにかく自分たちの仲間のうち半分は必ず乳がん検診を受けるという目標を立ててみましょう。2年に1度で良いのでまずは4人に1人が毎年受けるという目標を立てましょう。そして、みんなで力を合わせて乳がんで命を落とさなくて良い地域作りを目指していきませんか。

乳がんの発生過程

【第9話】 乳癌の危険因子②

前回は乳癌の発生を高める要因として、特に「日常生活に関わるもの」についてのお話でしたが、今回は「家族性乳癌」と「更年期障害の治療」についてお話させていただきます。
 
全乳癌の内、2-5%は同一家系内で見られ「家族性乳癌」と分類されています。家族性乳癌の中には遺伝子異常による“遺伝性乳癌(狭義の家族性乳癌)”と、食生活などの共通した環境的因子の影響を受けて発症した“広義の家族性乳癌”があります。
 遺伝性乳癌の原因遺伝子では『BRCA(ビーアールシーエー)1』や『BRCA2』がよく知られています。
『BRCA1』はDNAの修復に深く関与した遺伝子で、異常をきたす事により乳癌の発生を高めます。この遺伝子に異常がある家系では若年性乳癌や両側に発生する乳癌が多く、また卵巣癌の発生率が高くなります。当初、散発性乳癌との関与は少ないと考えられていましたが、散発性乳癌の30-40%、散発性卵巣癌の70%にmRNAや蛋白質レベルで異常がある事がわかってきています。
『BRCA2』も若年性乳癌が多いのですが、卵巣癌が少なく男性乳癌と関与しています。
 その他、遺伝性疾患に併発する遺伝性乳癌もあります。いずれにしましても家族に乳癌の方がおられるのであれば早めの乳癌検診をお勧めします。
 
次に「更年期障害」に対する“女性ホルモンの補充療法”についてです。更年期障害は閉経前後の女性ホルモンのバランスがくずれることにより生じる様々な症状の総称です。この更年期症状を軽減するためのひとつの方法として女性ホルモンの補充療法が広く行なわれています。
しかし、2002年に閉経期のホルモン補充療法(HT)が乳癌発生の原因になるという大規模な臨床試験(非常に信頼のある試験)の結果が報告されています。その後、アメリカのあるグループでは閉経後のHTが68%、エストロゲン製剤のみの補充療法(ET)が36%減少し、それらのグループで乳癌の発生が驚くべき事に約10%減少しました。さらにはアメリカ全土でも閉経期のホルモン補充療法が減少し、それに伴って年間で7%もの閉経期の乳癌が減少しております。
 以上より更年期障害へのホルモン補充療法は乳癌の発生を促し、その中止により乳癌の発生率を減少させる事がわかりました。これは海外のデータではありますが、日本人にも注意が必要といえるかと思います。
 では更年期障害の治療はどうすればいいのでしょうか。私は漢方薬を中心とした治療を行なっておりますが、全体的には比較的良好な結果が得られています。当科には乳癌に関わらず更年期症状の治療のために通われている方が何人もおられます。もしも更年期症状に悩まれている方がおられましたらどうぞ一度受診してみてください。

【第8話】 乳癌の危険因子①

 前話まではマンモグラフィ併用検診と乳癌の治療についてお話してきました。
私が乳腺外来を担当させていただいて2年が過ぎましたが、受診される方から「乳癌にならないようにするにはどうすればいいのですか?」といった質問をいただくことがあります。
乳癌の発生を高める要因としては、「遺伝的」なものと「生活環境」によるものが考えられています。今回は乳癌の危険因子として特に“日常生活に関わる”ものについてお話させていただきます。
 乳癌の多くは発生初期に女性ホルモンの一種である「エストロゲン」が強く関わっています。そのため一般的には高エストロゲン環境が乳癌の発生を増加させていると考えられていますが、初潮より閉経までは高エストロゲン環境が続きますので、閉経年齢の高い方は乳癌になるリスクが上昇することになります。
 体型的な要因としては肥満がありますが、閉経前までは乳癌発生にほとんど影響はありません。しかしながら、痩せている方は閉経後より乳癌発生率が低下していくのに対し、太っている方は逆に上昇していきます。これは脂肪組織内で作られるエストロゲンが関与していると考えられています。
 一方、食べ物に関しては、日本人において興味深い結果が報告されています。例えば、“緑黄色野菜”を毎日摂る人は摂らない人と比べて乳癌発生率がおよそ50%低くなります。また、“味噌汁”を毎日飲む人は飲まない人よりおよそ50%低くなりました。
それでは緑黄色野菜と味噌汁を毎日摂る人はいかがでしょうか?
結果は乳癌発生率がおよそ25%まで低くなりました。また、飲酒につきましては乳癌リスクを上昇させるといわれていますが、その比率は、日本酒1合(ビール300ml)で飲酒されない人と比べて20%高くなります。
 最後に、適度な運動は乳癌の発生を低下させます。
 以上のように見て参りますと、「乳癌の予防」のためにご自分でできることがいくつか思いつくかもしれませんね。しかしながら、あれもだめこれもだめと言っていては楽しくありませんので、お酒や食事に少し気を配りながら、適度な運動をしていくというのはいかがでしょうか?(当院に隣接したアクアスポーツでは、水泳やフィットネスなど、楽しく運動できる設備がありますよ。)

【第7話】 乳癌の治療法⑤

 乳癌の治療について、これまで手術療法と薬物療法についてお話ししてきました。本日は「放射線療法」についてお話しさせていただきます。
 放射線照射の目的は大きく分けて2通りあります。手術後の再発予防と転移巣の治療です。
 手術後の再発予防には乳房を温存した場合(乳房部分切除)の残った乳腺からの再発予防のための照射(残存乳房照射)と周囲のリンパ節への転移予防のための照射(領域リンパ節照射)があります。
現在は同様の治癒が期待できるならば、できるだけ切る範囲を小さくする事が望まれています(縮小手術)。しかし、乳房を温存した場合(部分切除)、残った乳腺に癌がまた出てくる可能性があります。その理由としては、乳癌細胞が取り残しになっている場合と、新たに乳癌ができてくる場合があります。どちらの場合でも残った乳腺に放射線照射をする事によって、少数の癌であればすべてやっつけてしまうことができます。
 領域リンパ節照射は周囲のリンパ節(同側鎖骨上リンパ節・胸骨傍リンパ節・腋窩リンパ節)等への照射によって、周囲のリンパ節再発を予防します。これを行うことによって生存率が改善することが報告されています。ただし、心臓や肺に放射線が当たる事による不都合もありますので、必ずしもすべての症例に行うべきではなく、どういう例に行うかは検討していく必要があると思います。
次に転移巣への照射についてですが、これも大きく分けて2通りあります。一つは痛みを取ること(除痛)で、もう一つは癌の縮小(消失)です。
 乳癌に限りませんが、骨転移によって非常に強い痛みを生じることがあります。現在では内分泌療法や化学療法が奏効し、痛みが和らいだり、先に述べたビスフォスフォネート製剤によって痛みが取れたりする事が非常に多く見られますが、中にはそれらの薬剤によっても痛みが持続する事があります。その様な場合、痛みの原因となる転移巣への放射線照射によって多くの例で痛みを取る事ができます。
次に癌の縮小についてですが、鎖骨上リンパ節転移などに照射する事によって、一時的に縮小あるいは増大を止める事が期待できます。しかし、完全に消失させる事は非常に困難です。むしろ、抗癌剤投与などによって癌細胞がほとんど死滅した場合に、生き残ったわずかの癌細胞を消滅させてしまう可能性が期待できるかもしれません。いずれにしましても今後さらなる検討が必要です。
 当院では放射線治療は行っておりませんが、病病連携により照射を行える施設に協力していただきながら癌治療に積極的に放射線療法も取り入れております。

【第6話】  乳癌の治療法④

ビスフォスフォネート製剤


 今回は乳癌治療薬のうちビスフォスフォネート製剤についてお話しいたします。これまでに出てきた化学療法や内分泌療法そして分子標的治療薬は癌に直接働いて癌細胞を殺したり、増殖を抑えたりする治療でした。しかし、今回お話しするビスフォスフォネート製剤は直接作用する細胞が異なります。
 癌細胞は体中のどこにでも浸潤し、無秩序に増殖するイメージが強いですが、必ずしもそうではありません。自由に浸潤・増殖できない組織の一つが「骨」です。いくら強い癌細胞でも硬い骨を直接溶かすことも浸潤することもできません。ではどうして乳癌はその硬い骨に高率に転移巣を作ることができるのでしょうか?
 全身のすべての組織は常にものが出たり入ったりして代謝が起こっています。でも硬い骨は見た目には代謝が行われず、言わば止まっているように見えます。骨はカルシウムからできていますが、実際には常に一定量のカルシウムが溶け出し、また一定量のカルシウムが骨に吸着されています。この骨から溶け出す量と骨に吸着される量が一定の時、骨は全く変化していないように見えるのです。ちなみに、骨から溶け出すカルシウムの量が吸着される量より多くなった場合、骨のカルシウム量が徐々に減って骨粗鬆症になるわけです。この骨からカルシウムを溶け出させる働きをするのが「破骨細胞」と呼ばれる細胞です。癌細胞はこの破骨細胞を活性化させ盛んに骨を溶解させます。この時、癌を増殖させるさまざまな因子が同時に骨から遊出してきます。この増殖刺激によって、そのできた隙間に癌細胞がどんどん増殖していくのです。するとますます活性化した破骨細胞を増やす信号を出し、どんどん骨が溶けていくのです。この悪循環により病的に骨が骨折したり神経を圧迫して下半身が麻痺したり、あるいはひどい痛みを生じます。さらに進行すると高カルシウム血症となり命に関わる場合も生じます。
ビスフォスフォネート製剤はこの破骨細胞に吸収され、破骨細胞を自殺に追い込みます。すると破骨細胞の数がどんどん減っていきます。すると次第にカルシウムは骨から溶けるよりも骨に吸着される方が多くなり、高カルシウム血症は改善されます。そして、どんどんカルシウムが骨に取り込まれ再骨化といって骨が本来の状態にもどっていきます。それにより、癌の増える空間も小さくなっていき、骨転移巣も縮小していきます。これにより骨折の可能性が減り、また痛みもおさまっていくのです。
これがビスフォスフォネート製剤の基本的な作用ですが、最近では直接癌細胞を抑制する可能性のあるビスフォスフォネート製剤が登場してきています。この薬剤も抗癌剤ではありませんので、脱毛や吐気・白血球減少などはみられず、比較的安全におこなえるため、当院でも通院のうえ外来化学療法室にておこなっております。

【第5話】 乳癌の治療法③

分子標的治療


 前回は乳がんの「②薬物療法」のうち内分泌療法と化学療法についてお話ししました。
今回は『分子標的治療』についてお話します。
そもそも「がん」とはどのような病気なのでしょうか?
正常な体の細胞は秩序ある増減(新陳代謝など)をおこなっています。それに比べて「がん」は無秩序に増殖し続け、最後には個体を死にいたらしめてしまいます。
ここで車の運転を考えてみましょう。車はアクセルをめいっぱい踏み続けるか、走行中にブレーキが壊れてしまうと大きな事故を引き起こすまで止まりません。がんが無秩序に増殖し続けるのもこの車の運転に似ています。細胞の増殖を司っているのは細胞の中にある設計図=遺伝子です。がん細胞を増殖させるのががん遺伝子(アクセル)で増殖を止めるのががん抑制遺伝子(ブレーキ)です。このどちらかが正常に機能しなくなってしまうと正常な細胞はがん化していきます。
今回お話しする『分子標的治療』とはこの異常をきたしたがん遺伝子によって作られるたんぱく質を標的にした治療法です。どの遺伝子が異常をきたすとがん化するかは臓器(胃・大腸・乳腺など)によって異なります。
ここから少し専門的なお話になりますが、乳がんでは原因となるがん遺伝子の一つにHER2(“ハーツー”と呼びます)があります。正常乳腺細胞のHER2遺伝子の発現に異常をきたし、細胞の表面にたくさんのHER2たんぱくが顔を出してくると、それがきっかけとなって乳腺細胞が異常に分裂・増殖をはじめます。これが乳がん発生の一つの原因で、およそ25%の乳がんでこのたんぱくの過剰発現がみられます。
このたんぱく質にくっつく薬を投与すると、がん細胞の表面にくっついて増殖の信号を妨害し、がんの増殖を抑えます。また、その薬を目印にして免疫細胞(白血球の一部)が集まってきて、がん細胞を食べてしまうとも考えられています。この薬が『分子標的治療薬』です。これは抗癌剤ではありませんので、脱毛や吐気・白血球減少などはみられません。比較的安全におこなえるため、当院でも通院にて外来化学療法室でおこなっております。
今回は多少難しいお話になりましたが、お読みいただきましてありがとうございました。

【第4話】 乳癌の治療法②


 乳癌の治療法は、大きく分けて①手術療法②薬物療法③放射線療法の3つがありますが、前回は「①手術療法」についてお話しさせていただきました。今回は「②薬物療法」についてお話しします。
 薬物療法には大きく分けて、Ⅰ.内分泌療法、Ⅱ.化学療法、Ⅲ.分子標的治療薬、Ⅳ.ビスフォスフォネート製剤、そしてⅤ.緩和療法(鎮静剤などによるがあります。ⅠからⅣは乳癌に対する積極的な治療法ですが、Ⅴは痛みを取るなど乳癌(主に転移)による苦痛を取り除く治療法です。
 乳癌のおよそ70%は卵巣ホルモンの刺激により増殖する性質を持っています。Ⅰ.内分泌療法はその卵巣ホルモンが乳癌細胞を刺激する道筋のいずれかをさえぎることによって乳癌の増殖を抑える治療法です。閉経後は体脂肪や筋肉などで生成されるホルモンを遮断します。副作用は更年期症状などがみられることがありますが、全体的には比較的軽く、ご高齢の方にも比較的安心して用いることができます。
 Ⅱ.の化学療法は抗癌剤を用いる治療法です。点滴で投与する薬剤と内服薬があります。抗癌剤といえば副作用がとてもひどかったイメージがありますが、現在では制吐剤(嘔気を抑える薬)など副作用が比較的軽い薬剤や投与法が開発されています。したがって、これまでのような入院しないと治療できないという治療法はむしろ少なく、多くが外来で安全に治療が行えるようになってきています。
 当院でも平成18年4月より外来化学療法室を設置し、安全にリラックスしながら治療を受けられる環境を提供させていただいており、これまでに多くの方が外来通院で抗癌剤治療を受けておられます。つづきは次回にお話しさせていただきます。 大切なあなたとご家族のために乳癌検診をうけましょう…

【第3話】 乳癌の治療法①

術後3ヶ月後の創部

乳癌の治療法は大きく分けて
①手術療法
②薬物療法
③放射線療法
の3つがあります。今日はそのうち野「①手術療法」についてお話しします。
 手術療法は文字通り「手術」によって乳癌を切除する方法です。 以前は大きく切り取った方が治癒する可能性が高いと考えられ、乳房全切除に加えて、胸にある筋肉(大胸筋と小胸筋)も切除し、さらに腋窩(わきの下)のリンパ節も広範囲に切除していました。そのため、脇の下が深くえぐれたり、肋骨がはっきりと浮き出たり、また手術した方の腕が像の足のようにむくんだりすることがしばしば見られました。
 しかしながら、大規模な臨床試験により、大きく取っても小さく取っても取り残しさえなければ寿命が変わらない事がわかりました。そこで現在では、可能であれば乳房を温存する手術が行われるようになってきました。当院でも積極的に温存手術を行っています。
 平成18年4月より平成19年1月までの10ヶ月の間に乳癌の根治手術を14例行いました。そのうち初発(初めて発見)の乳癌は12例で、乳房温存手術は7例(58.3%)でした。現在のところ、およそ6割の方の乳房を温存することができています。
 乳癌は発見が早いほど温存治療の選択が可能です。できるだけ小さい手術が受けられるように『乳癌検診』を受診し、乳癌になった場合でも早期に発見できるように努めましょう。 術後3ヶ月後の創部 大切なあなたとご家族のために乳癌検診をうけましょう…。

【第2話】 乳癌の発見方法について

乳頭陥没


 乳癌は体の比較的表面にできる癌です。そのため、「乳癌になったときは自分で見つけられるから乳癌検診を受けなくてもいい。」とおっしゃる方がとても多く見受けられます。 乳癌の発見にはいくつかの方法があります。

1.自分で発見
 自分でしこりをふれたり、上写真のように乳頭陥没や皮膚の引き連れなどに気付いて発見されることがあります。この段階ではほとんどの方で、血管やリンパ管に癌細胞がこぼれて全身を回り始めています。それらの癌細胞が将来的に肺や骨といった遠隔部に転移巣を形成する可能性があります。

2.視触診検診
 定期的に受診されている方は、自分で見つけるよりは比較的小さい段階で発見されます。乳癌は小さいほど転移する可能性が小さくなりますが、それでも視触診だけでは一定の割合で将来的に転移する乳癌しか発見できません。

3.超音波検診
 視触診よりもさらに小さい段階で発見される可能性はあります。しかし、しっかりとした診断能力を持つ医師が検診を行っている施設では、有効性は乏しいと考えられます。むしろ二次検診(精密検診)で威力を発揮します。

4.マンモグラフィ検診
 上の1から3は基本的に浸潤癌(一定の割合で転移する癌)を発見する方法です。多くの非浸潤癌(転移しない癌)は1から3のほうほうでは見つかってきません。唯一発見できるのがマンモグラフィです。明らかなしこりがなくても乳がん特有の石灰化(カルシウム沈着)や引きつれなどで、早期の癌を見つけることができます。
ただし、乳癌のおよそ10%はマンモグラフィに映ってきませんので、視触診検査と併用します。

以上より、転移しない早期の乳癌を発見するためには、マンモグラフィ併用乳癌検診が必要です。乳癌で命を落とさなくていいように、みんなで定期的に検診を受けるようにしましょう。 大切なあなたとご家族のために乳癌検診を受けましょう…。